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小国の男

14歳のとき、星新一氏に憧れて、こつこつ書いていたショートショートの、一部加筆。
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核実験が次々と行われ、大国の乱れに乗じて、ある国が出現した。
すなわち、出来た、というには比べ物にならないほどの小国だった訳だ。

ところが、その国民は軍国主義であり、あとでやってきた大使や代表者も受付なく、自然、国は成立った。さらに、その国、というのは一つではなく、世界中に点在していたのである。
それに加えて厄介なのは、資源の大産地にどっかと腰をおろしていたからである。いわく、アメリカではメサビ、ソ連ではマグニトゴルスク、スペインではビルバオというふうである。

これでは、他の国はたまらない。とうとう、国連で武力を用いることに決まったが、いささか遅かった。小国はそのようなことは計算に入れていて、水爆がある、と脅した。攻めてくれば各国におとしてやる、その証として、一発太平洋に落とした。

国連軍はやむなく進撃を中止し、様子を見ることにしたが、なにしろ輸出源を失ったのだ。相場は暴騰し、世界中は大混乱に陥った。

小国はまたもそれにのって領土を広げた。別の小国は滅亡し、大国も著しく衰退した。

ついに、残った大国の代表が、その国へ交渉に行った。やはり、邪魔な衛兵たちが来たが、それどころではない。この話し合いには世界中の運命がかかっているのだ。

そこで、代表の男は、あることに気づいた。衛兵達は、ごつい見せ掛けの体に比べて、交渉力にひどく弱い。
彼は、ある期待を持って奥へ進んだ。やはりだった。
この小国を構成しているのは、数十人の衛兵だけなのだった。情報に頼った結果、こんな羽目になってしまった。

男は、急にある考えを思いついた。

このまま、オレがこの国を治めても、何もおかしくないんじゃないか。


by pmrider | 2017-05-16 23:13 | 過去HPの作品 | Comments(0)