ちょっと前に、スーパーの「フレスタ」で買った、タイのカップラーメン。
ビーフンのようだが食べてみると、・・・


げー。なカンジ。

いままで、相当味の悪いモノでも、勿体無いから食べ残すことはない性格のボクなのに、半分ほどでギブアップ。

ピーケイサイアム、というメーカー(輸入業者?)

二度と選ぶことのないように、自戒を込めて書き残す。


そういえば、昼間に、自分用の昼食にパスタを作りました。
会社でタダでもらった、レトルトパウチの「そうめん用トマトソース」。

そうめんで作るのが筋だが、普通のスパでもいけそうな気がしたので、試してみました。

冷製、という観点なので、スパは茹でて、一旦冷水で冷やす。
そこにトマトソースをかけるので、基本的には間違っていない。

特に問題なくいただけました。

茹で加減は固めが好きなのだが、この場合は柔らかめがいいようだ。
この1週間は仕事が本当に忙しく、ハラハラする日もあり、まだ片付かない仕事が少し来週に残っている。
いつもの週なら、平日でも1~2回は朝早起きして走るのだが、何度もトライしたけど、疲れて起きれない・・・
さすがに早めに帰れても、夜9時過ぎからナイトランもしたくない。

せめて日曜は走れるかなと思ったが、天気予報は雨。
なんたることだ。

土曜日は、やっと朝に10キロ。
日曜は、終日雨ではなさそうなので雨さえ上がれば走る気になっていました。

で、今日の日曜。
思ったよりも外から雨の音は聞こえない。空は曇り。

天気レーダーでも、なんとかいけそうだ。
気温は、やや高そう(20℃くらい?)だが。

本日のコースは、「ひたすら北上、操山貫通」コース。
百間川沿いに走るのではなく、夏のトレイルランで覚えた登山道を使って、ほとんどまっすぐに北に進み、操山の懐を「真ん中から、思い切り一発突き抜ける」コース。

途中のバイパスの交差点。ここからは初めて走るコース。
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あの山まで走る。家から3キロ付近。
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暑いので、思わず自動販売機で水を買う。500ccPET。
山が近くなってきた。家から5キロ。
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山道へ入る。雨上がりではあるが、岡山市の降水量は5ミリだったから、極端にぬかるんでいないことは予想通り。
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登りが終わった。水も、ボトルがジャマなのですべてハラに格納(笑
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里山センター付近に出て、さらに北上。
マツバボタン
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ネコがいた。3匹ともわかるかな?
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いつもの河川敷に出る
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走りなれた後楽園への河川敷コースを、まだ北上。
折り返したところ。ランナーはほとんどいない。小雨がちらつく。
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ここから家に戻る道が難しい。いかに止まらないで、安全なルートを選ぶか。
小学生のときの通学路でもあった歩道橋をわたることにしました。
西方向
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北方向
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わざわざ、こんなありふれた風景を撮る人もあまりいないだろうが・・
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ちょっと強い雨にあって雨宿りもしたけど、ほんの数分。
小雨はあまり気にならない。

今日のコスチューム(笑 ポムの樹の前で。
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今日も20キロ。
その直後に、またもスポーツドリンク購入。
タオルの搾り具合でわかる汗の量は夏のそれに近い。

でも、今日も、途中で弱気になりそうだった自分に勝てた。
最近「2」の宣伝が喧しい。
もちろん、「1」はCMは見たけど、本編は見たことがない。
でも、なんか惹かれるものがあって、「1」を見たい、と思っていたら、今夜地上波で放映。
これは見ないと。

土曜だけど仕事がやや忙しく・・
でも21時までには家で落ち着いていたから見たけど・・・・・


なんじゃこれ。

て、カンジ。


スタローンが作りたかった映画、みたいな。
とてもストーリーは単純だ。
だから、あまり考えずに見れる???

ドカを乗り回す、リー・クリスマスはかっこええけど。

カノジョの名前を呼ぶなら、「エイドリアン!」だろ、ロッキー。みたいな。

きっと、「2」は見ないだろう。
いまに地上波で放映されてて、偶然チャンネルを切り替えて映ったら、みるかも・・・
http://www.courant-marin.jp/asan/index.html

ずっと前から気になっていたけど、エントリーすべきか、まだ時期を待つべきか、考えていました。

で、昨夜は発作的(笑)に、寝る前にネットからエントリーしてしまいました。
24キロのロングクラスではなく13キロのショートクラス。
定員が120名だから、普通の大会なら、すぐに締め切りになりそうなもんだが、1週間ほど前に事務局に電話したときもまだ参加者に余裕がありそうでした。
まだ、この近辺では競技者人口は多くないのだろうか。

なにげに、昨年のロングクラスの動画をみつけて見ていたけど・・・・

うーん、みんな、本格的だ。
タイツか、なければ長いソックスで、ほとんどが短パン。

ボクはトレーニングパンツで行く予定だけど、そんな人はほとんどいない。

11月末の標高1000mくらいの山なので、気温もかなり低そうなのでTシャツで走るワケにもいくまい。
普通のロードレースなら、4℃くらいでもボクはTシャツで走っていたけど、山はどうなのだろう。

問題は
・気温の低さに対応する衣服の準備と、体温が上がって脱いだときの持ち運び
・防水・防寒用のジャケットの持参(ノースフェイスの軽くて良いものは1万円くらいする)
・リュックをどうするか(できればトレイル専用の軽い素材がいいのだが、これは贅沢はいえまい)
といった点。

さらに、大会には「失格行為」が羅列されており、その一つが「音楽プレイヤで音楽を聴きながら走るものは失格」というもの。

困った。

いつも持参するiPhoneではRunKeeperでラップをアナウンスしてもらっている。
また、コンパス機能も、マップの表示機能もあるので、これをもたないで走ることには抵抗がある。

イアホンを使って走ると、音楽を聴きながら走っている、とみなされる可能性が高いので、説明をしなくてはならないが、多くのスタッフが運営する大会では、そんなワガママが通る可能性は低い。

とりあえず、ポケットに持っていくしかないかな・・


ま、まだ一ヶ月あるから、準備する時間はある。

それにしても、受付後、確認のメールが送られる、と説明されていたけど、まだ受信できていない。
なんで・・・?
年齢制限にひっかかったか。(笑 まさか)

もしくは、トレイルラン歴2ヶ月、と書いたのが、アウト!だったのかなぁ・・・

結果が悲惨だったとしても、ゲストの鏑木毅氏のサインくらい、もらえたらなぁ・・
今後、どのレースに出るか考えていたけど、丸亀国際ハーフは5000円だし、総社ハーフは3500円。
いままで10キロをちょぼちょぼ走っていたときは2500円くらい。

そろそろ、出る大会を絞っていかないと、予算が・・・

ということで、今後はハーフに限ることにしよう、とか考えています。


先週に引き続き、20キロ。
朝7時前の土手は影が長く伸びる。
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最近、市内の道はどこも雑草が生い茂り、草刈の予算を削減しているのかとか思う。

河川敷のランニングコースも同様で、道をさえぎる雑草がかなり長いのですれ違うときも気を遣う。
そんな環境を喜んでいるのがセイタカアワダチソウだろうか。
花粉アレルギーのある人にはぞっとする風景?
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晴れているせいか、先週よりも暑さを感じる。
もっと走る予定だったが、20キロでまとめることにして、東山の電停付近へ。
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まだ朝8時半くらいだから道はガラガラだ
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今日も、先週に続いて20キロ終点付近のハローズで、グリーン・ダカラを買って一息。
2時間4分。
もう少し、気合いれていかないとな!!
確かにシリーズは全部おもしろいのだが、それに「アツい」要素が前面にでていたのが98年のコレ

「事件は現場で起きているんだ!」
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「青島、確保だ!」
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この映画の公開前、ボクは全然この番組、知りませんでした。
派遣でソフトウエア開発の会社に行ってたとき、メシ友の男性が、昼食のとき食堂で、「いいとも!」に宣伝ででていた「3アミーゴズ」を見て喜んでいたけど、ボクはちんぷんかんぷん・・
「PMさん、これ、おもっしょいですよ」
とカレに教えてもらって、movieを見て、今に至る。

以前の放映のときにも思ったけど、あの当時はレストランでもどこでも喫煙できた、スモーカーにとっては黄金時代(笑)。
Wifiではなくケータイでネット接続するとか、だんだん現代とは違和感が増してくる。
いかりや長介は、この役のイメージで逝去したことが、なによりの幸運だと思う。
今週は忙しいので時間が作れないのと、起きれないのが重なって、やっと今朝6時過ぎから走りました。

いつものルートの一つで、新岡山港に向かう道で工事の様子。
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なんだか、すでに通行止めの案内があったような気がするが、見逃しました。
でも、工事はもう始まっていることはわかりました。
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工事用のフェンスには「仙台銘板」と書いていたから、もしかしたら、宮城の業者なのか。
復興のために、受注した会社なのか。
ヨメさんが少し前に、この場所を含む旭川の土手に、津波を避けるための堤防を築く計画がある、とか世間話できいたようだ。
これも、復興予算の「ついで買い」なのか。
今でさえ、ボクの家は大雨で増水したときの旭川の水面よりも低い土地であることは知っている。
そういう対策も必要なのはわかるが、しばらくこのコースが使えなくなるのは、ちょっと困るかな・・

今日は仕事もあるし、10キロまで粘るのではなく8キロくらいでやめておきました。
それでも、10キロ1時間は切るペース。
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今日は、会社の送別会兼歓迎会。駅前のかに道楽。
仕事のため、ボクは19時のスタートには間に合わなかったし、バイクでしかいけなかったのでアルコールもなし。
女性がメインのセクションで、その中心人物となっていた30~40代女性二人の送別、ということで、幹事の後輩女性社員は最後は涙をボロボロと・・・
一人は寿退社だから、仕方がないのだけど。

ボクがその立場でも、ナミダ流す人はおそらくいないだろうな。。。という諦観。
約束の1週間が過ぎた。しかし、サトルは実効性のある対策など講じる事
も出来ず、その日は客とのアポのため、ということで朝は事務所には顔を
出さなかった。
サービス期間として一定期間の値引きをすることくらいしか思いつかなかった。
自然と足は、この1週間、ほとんどの勤務時間を費やしたRタウンに向かって
いた。それでもサトルは、何らかの対策は考えたかった。
自分が営業で獲得した店だが、切り替えされた喫茶店に入った。それでもここの
店主は息子がサトルと同世代のせいかサトルのことをわかってくれていて、
話はよくしてくれる。
その店に入るなり、サトルは店主に意外な言葉を掛けられた。
「サトル君、キミのとこに戻してもいいかい?」
「へ?」うっかり彼は呆けたような返事をしてしまった。「戻す・・・・・って」
「やっぱりキミのとこと元通りに契約したいんだが、ダメだろうか。」
店主の話をよく聞くと、それまでは向こう2年間あった配送サービスが、急に
半分以下の期間に短縮されたという。料金も当然割引されたのだが、単なる
供給側の都合、という一方的な理由に納得が行かないという。
店主は、さらにサトルに天使のように告げた。
「あの道の向かいにあるDさんとこ、あそこでも同じこと言っていたよ。
行ってみたらいい」
はたしてサトルは、鞄に入りきらないほどの再契約書をかかえて、意気揚々と
事務所に引き返した。
サトルも事情を正直に支店長に説明した。完全に彼の功績とはいえなかったが、
結果として支店長は,サトルが事務所にいる間は相好をくずさないではおれ
なかった。

本当はコージとでも会って,これまでの苦労話を聞いてもらいたかったが、
この1週間でなく、その前から、コージは成績を挽回したいのか、ほとんど
いつものコーヒーショップでは顔を見なかった。
その日は、夕方に銀行に立ち寄りたかったので、サトルはフレックスのコアの
終わりを確かめて退社することにした。
普段と違って、まだ明るい陽光に照らされた街の景色を下に見ながら、サトルは
やはりエリコの部屋を目指して飛んでいた。
ビルの屋上に降りて、ふと物陰に目をやったサトルは見慣れた物を発見した。
「これは・・・レイザーだ。それも・・・」まさかと思って、サトルは
自分のレイザーを背中に固定して,そのまま階下に降りていった。
レイコの部屋に入る前にレイザーを廊下の隅に置いた。
ドアホンを鳴らす。この時間ではレイコは不在かもしれない。3回ほど鳴らしたが、
応答はない。ノブをまわすと、意外にもカギはかかっていなかった。
そっと開けて入ってみる。中には誰もいない。以前に見たように整理された
仕事場の奥にパーティションがある。
その付近から、小さい音がした。物が滑ったような音だ。
そちらにゆっくり歩いてみる。
「エリコ!」床に転がされたエリコが、手足を縛られて、口もテープで塞がれて
いる。すぐにサトルは駆け寄って,まず口のテープを剥がした。
「あ!ありがとう・・・サトル・・サトルよね?」
「どうしたんだ!これは・・・また泥棒か?」
「違うの・・・」
助けてもらったにしては,喜ぶよりも悲しそうな表情のエリコが,サトルには
不思議だった。縛られた紐も、急いで外した。
「あなたのためを思ってやったの。でも、コージが・・・」
「コージ??!やっぱり!」
「知ってたの?」
「いや、あいつのレイザーが屋上にあった。でも、それとエリコがどうなってる
のかは・・」いきなりコージの名前がでたのと、エリコとの関係を考えて
サトルは少し混乱した。
「あなたが困っていたのは、私のせい。でも、これ以上困らせたくなかったの。」
「・・・・どういうことなんだ。」
「アナログのレコードを複製していたのは、私たちよ。それを捌いていたのは
コージ。」
「・・・・」
「営業の仕事でコージが来たの。あんまり可哀想だったから、ここのことを
説明したの。そうしたら、いつのまにかこっそり勝手に操作してたみたい。」
「・・・・」
「でも、信じて。決して私は商売して儲けようと思っていたんじゃない。
サトルと同じように、私もあのレコードが好きだから・・・・。」エリコが嘘を
ついているようには見えなかった。「複製する技術は私しか知らない。だから
私がやめよう、と思えばそれで終わり。Rタウンの人にもメールで連絡して
おいたわ。でもコージは・・」
微かな物音がしたように思えた。
「そこまでだ。お二人さん。こっちへ来な」コージが短銃を持って立っていた。
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「サトル、良い気分だろうな」いつもとは違う、不敵な表情のコージが
ソファに座ってサトルをえぐるような視線で見つめていた。「切り替えできた
んだってな。」
エリコと共に、いつも音楽を聞いていたスタジオの部屋に連れて行かれて、
窓は閉められていた。これでは少々の衝撃音は外に漏れることはないだろう。
「いつもいつもあの支店長のヤローに偉そうなこと言われてるオレを見て
さぞかしおかしかっただろ」
「そんなことあるか」
「・・・まあ、いい。でもな、これからはアイツが部長に叱られる番だぜ。
オマエもな。」
「コージ、お前、いつのまにかアナログの配送サービスやってたのか?」
「なかなかいいぜ。こっちも。なにしろ全世界から引き合いがあるからな」
「だから・・・」エリコが絞り出すように言った。「あのレコードの複製には
限界があるの。!何度言ったらわかるの?コピーすればするほど、複製元の
レコードの音質も、複製先の再現度も下がるのよ。」
「だったら、もっといい技術者を探すさ」コージの考えはみじんも変わる様子
はなかった。「もちろん、ノウハウを詰め込んだ資料はディスクに入れて
もらってゆくがね」
「だめ!」エリコが叫ぶ。「私は、そんなことのために開発したんじゃない。
おばあちゃんやお父さんや友達が大事にしていた、世界でたった1枚の大切な
ものが消えてなくならないために、作ったの」
「そういうことを言ってるから,オレだけじゃない,いろんなヤツに狙われる
んだぜ」
エリコと出会ったあの時も、そうだったのか、とサトルは思った。
「まあいい。このまま黙ってくれればこちらも大人しく退散するんだがね。
それがイヤだというのなら・・・」コージはちらっと窓の外を見た。
「今日はいい天気だぜ。レイザーで飛ぶには絶好だ。レイザーを持っていない
人には最悪だがね」
エリコとサトルはアンプの近くにいた。サトルは、ゆっくりと、後ろ手に、
エリコがレコードをかけようとしているのが見えた。反対にコージは、
おそらく音響的には最高の席にいた。
「おい。じっとしてろ」コージは短銃を握りなおして立ち上がろうとした。
サトルは、ちらっと見たアンプの音量調節のゲージに、ぐっと唾を飲んだ。
このスピーカで、あの音量が流れれば・・・おそらく・・
「エリコ。いつもおとなしくオレの言うこときいてたオマエが、どうした
ってんだ。ええ・・?」コージがサトルに意地悪そうに微笑んだ。「サトル,
オマエも隅に置けねぇなぁ。人の女に手を出すなんてよ」
「なにぃ!」サトルは一瞬躊躇し、そしてコージに突進して行った。
コージは発砲のタイミングを逸して,二人はソファの下で相手を組み伏せよう
お互い上下になって争っていた。
エリコはしばらくそのままの位置にいて、短く叫んだ。「サトル!」
片手はアンプのスイッチに、そして片手は耳を塞ぎ、サトルにもそうするよう
促していた。
サトルはすばやくコージから離れて、耳を塞いで床に伏せた。後ろから
コージが自分を狙って撃つ構えをしているのが見えた。
「!!!!!」
目の前が真っ白になったようだった。
薄目を開けて見ると、コージは耳を塞いだまま逃げまどっていた。
サトルにも、音が空気の鞭のように自分を波状的に襲ってくるのがわかった。
ほどなく窓のガラスが割れたのが見えた。入り口に近づけば音量が増すため、
コージは窓に駆け寄った。
オーケストラと女声の大合唱に、コージはよろめくように窓から重心を外に
移そうとしていた。
(エリコ、やめろ!)
サトルはエリコに手で合図した。目をつぶっていたエリコはそれより数秒
遅れてサトルに気づき、音量を止めた。
窓を見ると、コージはいなかった。
サトルはまるで聾唖になったような気分で部屋を飛び出し、廊下のレイザー
を持って部屋に戻ってきた。
うまくいくかどうかわからなかったが、リングを装着したサトルは窓枠を
蹴って空中へ飛び出した。

レイザーのプロペラは空中でうまく作動した。
しかし、普段は上昇する癖がついているサトルは,コントローラを
慎重に操作し、落下速度よりも早い猛烈な速度でビルを下降した。
異常な加速で、顔が歪みそうだった。下を見るのもやっとだった。
地面に着く前の減速をどうするか,とか不安になりながら、それでも
やっとコージの姿を発見した。
減速できすに追い越して下まで行き、また上昇しすぎる、という
飛び方を繰り返したのち、コージにゆっくり接近した。コージはあの
大音量のために、半分目を閉じて「落ちて」いた。
なんとかコージの右腕を掴める、というところで、コージはいきなり
顔をあげてサトルを見た。そして、短銃を構えた。
たじろいだサトルが動きを止めた。
コージはそのまま、また短銃を降ろすと首を大きくうなだれた。
(ほぉっ)
サトルがほっと息をして右腕を掴んだ、その下にはもう低いビルの屋上の
景色が見えていた。
(まずい!)
一気に急上昇に切り替えたが、下降速度は弱まらない。
(だ、だめか・・・?)
方向を、ビルを避けるように曲げてみたが、そこにも別のビルが現れた。
(仕方ないか・・・)
リングにはエマージェンシ・ボタンがあるが、これを使うと飛行免許の
更新時に不利になるときいたことがある。しかし、今はそんなことは
言っていられない。サトルはボタンの位置を確かめて、思い切って強く
押した。
とたんに、プロペラは180度回転してサトルの足下に固定され、羽根は
サーフボードのような形にまとめられた。
そして腰の部分の後ろには直径80センチほどの風船が一瞬にして膨らんだ。
サトルは長い楕円のボードに乗って、あたかも空を滑るようにして斜めに
飛んでいた。
野外劇場と思われる広場を見つけて、サトルはそこを目指して少しずつ
下降していった。
折しもそこではアマチュアバンドのステージが開かれていたらしく、
コージをかかえたサトルは観客の好奇の目にさらされ、すこしして、それは
歓声と拍手に包まれた。

「まっずー。急がないと」早朝。サトルが焦って着替えていると、母親が
声をかけた。
「あら?もう免停終わったんじゃない?」
「あ!そうだった!あんまり長かったんで、気が付かなかった」
先日の緊急着陸の件で、サトルは違反行為として免許を停止されていた。
仕方のないことだったが、その間サトルは「地上通勤」を余儀なくされて
いた。
しかし、これで朝はいつもよりは20分はゆっくりできる。
「タケポート」に行ったが、やはりコージはいなかった。
もともと音楽を「売る」のではなく「作る」方が性に合っている、と
常々話していた彼は,どこかでベーシストとして活動している、と
人から聞いた。コージとエリコの仲も、男女の関係というほどでは
なかったらしい。
エリコの仕事もベンチャー企業の支援を受けて、それなりの機密保全を
保証されている場所に研究所を移している。
「K町西ノ森ビルのポートにおいでの方は始動の準備をしてください」
アナウンスが聞こえた。
サトルは,あのエマージェンシ・ボタンを押した時の爽快さを忘れられ
ないでいたが、それはぐっと我慢して、通勤ルートを飛んでいった。
そしてあのエリコのビルに近づいた。研究所は移したが、あのスタジオは
そのままで、エリコもそこに住んでいた。ルートから外れたことを示す
警告音が鳴り出したが、それは無視して、サトルはあの窓に近づいた。
「おはよう!」
窓を開けたエリコは,待っていたかのようにサトルに呼びかけた。
「ああ、おはよう。もう、大丈夫か?」
「ええ。今日から飛べるって、私も知ってたのよ」
「ボクは忘れかけてた」
「しっかりしてよね。」ふふっとエリコは笑って、部屋に入っていった。
そしてすぐに窓に戻ってきた。「こんなの、どう?」
ワグナーの「ワルキューレ」が聞こえてきた。
「今日も頑張ろうって気になる?」
「そうだな」サトルはちょっと苦笑した。「でもボクはどこかの映画で
爆弾を落とすヘリコプターじゃないぜ」
「じゃ、何を落とす?」エリコは両手のヒジを窓枠につき、アゴの下で
下向きに組んで笑っている。
「今は、これくらい」サトルはポケットに入っていた小さなハート型の
チョコを,包まれたままでエリコに投げた。
「いつか、絨毯爆撃してね」
「ああ。いいとも」
サトルはいつしか昇ったことのない高度までレイザーを飛ばしていた。

  <完>
「こういうの、知ってる?」
コージが握った手を頭の上に持ってくる仕草をして、サトルに声を
かけた。
「じいさんが子供の頃、マンガで,頭の上にプロペラのっけるだけで
空を飛べるツールがあったんだってさ。」
サトルも知っている。それが数十年かかって現実となったのが、
これだ。と、こないだ父親から教えてもらった。
サトルもコージも、他の通勤客と同じように、「飛ぶ」のを待って
いた。通称「タケポート」と呼ばれるこの広場から、数人ずつが1分
間隔ほどで「離陸」している。彼らが装着しているものは一般的には
「レイザー」と呼ばれた。
スーツの上には専用の全天候型ウエアを着用し、腰に回して固定した
リングから背中にポールが立っている。その上に傘のようにプロペラが
ぶらさがる。
ウエアにしてもポールにしても、見た目ほどの重装備でもなく,彼ら
の大部分は自宅から、専用のワイヤで背中に固定して運んで来る。
安全上の問題から、家から直接は使えないが、ここから目的の場所へ
最も近いルートを飛んで「通勤」することになる。
このところの「飛行通勤」の流行のおかげで、地上の交通機関の渋滞
もかなり緩和されてはいるが、空を飛ぶ快感を覚えてしまった人々は
なかなか従来のパターンに戻そうとはしない。
墜落事故や接触事故の防止のため、規制も厳しい。道草などもっての
ほかだ。悪天候の時は別の通勤手段を選ばねばならない。それでも、
若い世代の人間には絶大な人気があった。
サトルが先に飛行免許を取り、同期入社の友人のコージも後を追って
免許をとった。
「K町西ノ森ビルのポートにおいでの方は始動の準備をしてください」
アナウンスが聞こえた。
「行こうか」
サトルがコージを促した。いつもの通り、腰のリングに埋め込まれた
タッチパネルを使って、非常用装備や一年間使用可能な小型電池の容量を
チェックする。おおよその必要な装備は、このリングにすべて内蔵されて
いる。
いくつかの,行き先を表示した透明な円筒形の筒が空に向かって
おり、サトルが先にその一つの中に入った。横風を防ぐために地上20m
まで円筒を垂直上昇し、そこから飛ぶことになる。
「離陸してください」
この中ならどこからでも聞こえるスピーカから案内がクリアに聞こえた。
サトルは,これも昨日と同じように、リングにあるリリースのボタン
を軽く押した。これは、わざわざ電気式にしていない。
頭の上の「傘」は瞬時に開き、鋭い音で高速回転を始めた。リングから
ケーブルで繋がったコントローラを握ったサトルは初夏の空に、花火の
ように飛び出していった。
(この時が、一番気持いいんだよな)サトルは墜ちる危険など、
これっぽっちも感じていないように、コントローラの加速ボタンに
ぐい、と力を入れた。

10分ほど行くうちに、サトルはちょっと回りを見渡すようになった。
コージがまだ追いつかないうちに、彼はこっそり、少しばかりルートから
離れたコースへ向かった。決まられたルートを外れると、リングは自動的に
警告音を発することになっているのだが、ここはまだ検知システムが
十分でないらしい。
下の世界は、緑が点々としか見えず、寒色のビルでびっしりと覆われて
いる。その苗床から、時折高層ビルが勢いよく伸びてきていることがある。
そういう場所は避けるようにルートが修正されるのが普通なのだが、
間に合わない場合もある。
おそらく下の部分はオフィスユースなのだろうが、サトルの飛ぶ
高度は居住区となっているビルの一室。
窓から5mほど上にステイして見える部屋の中に、普通の家にはまず置いて
いない、高価なアナログディスクのプレイヤがあることを知ったのは、
ほんの2週間ほど前だった。どっしりとした本体の上のターンテーブル
には、どんなレコードが乗ることになるのか、果たしてどんなに生命力
溢れる音が流れ出してくるのか、普段は誰でも持っているオプティカル
ディスクの音しか聞く機会しかないサトルには大いに興味があった。
そこでじっと覗いていては、さすがに犯罪になりそうなので、今日も
サトルは小さく手を降って、残念そうに元の出勤ルートに戻るのだった。

会社に着き、スーツ姿に戻ると、とてもさっきまで世界を手中に収めた
ような開放感を感じていたとは思えないほど、ユウウツな現実があった。
適当に顧客にアポを入れたあと、大きめなバッグを抱えて、サトルは
会社を出た。直ちに営業回りに行くはずなのだが、大抵は裏筋の
コーヒーショップに足を向けることになる。時間差で、コージも
店に入ってきた。
「やってらんねぇよなぁ」
これもいつもの通り、コージの支店長への愚痴が始まった。
超高密度の磁性体を使った音楽データ書き換えサービスを売り物にして
いる会社に二人は勤務している。
今やネットワークで家庭の端末に音楽や映像データを取り込むことは
誰にでも可能だが、それに付加価値をのせて物理的メディアに保存して
配送する,という特徴で,ある程度の売上げの伸びは確保していたのだが、
営業課員へはハードルの高い売上目標が常に掲げられていた。
自然と、目標をクリアしていない課員には、支店長からの「お小言」が
下ることになる。コージは、もう1週間続けて、その「餌食」となって
いるのだ。幸いに、サトルの場合はコージの半分以下の割合だが。
「ま、そのうちなんとかなるだろうけどな」
打たれ強いというか、あっさりした性格がコージには救いだった。
「そういえば、今日も新しいビル、出来てたよな」サトルが言った。
「ほら、通勤ルートの途中」
「そうだな。オレも目をつけてた。あそこを回ればちっとは見込み
とれるかもな。手分けして行くか?」
「イヤ、オレは、まだ、いい。今日はコージ、行ってみろよ」
二人は、コーヒーを飲み干すと別々の方向に歩いていった。

通りを歩くうちに、サトルはふと奥まった路地に見慣れたものが
あることに気づいた。無造作に置いてあるのはまさしく、「レイザー」
だった。しかし、高価で大事なものをこんな場所に、と思って、
サトルは近づいてみた。
リングを見ると、バッテリーも十分あるようで、故障で廃棄したもの
でもなさそうだ。
(ふうん、まだ使えるのに)
サトルが立ち去ろうとした時、路地の入り口から男が走ってくるのが
見えた。彼の視線はこちらに向かっている。手には大きな袋を抱えて
いる。そのあとから、今度は女性が来て、泣きそうに叫ぶ。
「どろぼう!」
そして男が叫ぶ。
「てめぇ、それ、返せってんだ!」
状況がはっきりつかめなかったが、とりあえずサトルはレイザーを
持ったまま、身をかわした。
男はつんのめって向こう側に倒れた。
「どろぼうよ!」
女性が、息を切らせながらやっと言った。
「にいちゃん、返せよ!それ」
男がぎらぎらした目で睨み、短いナイフを見せた。サトルは仕方なく
レイザーを男に向かって投げた。その前に、パネルをキーロックして
おくのを忘れなかった。
もどかしそうにレイザーを男は装着し、飛び上がろうとしたが、
ポールの上のプロペラは開かない。
パネルをチェックしようと男がサトルから目を離したのを待って、
サトルは体ごとぶつかっていった。
路地の脇にあるダンボールやゴミに二人はころがりこんだ。
すぐに離れて立ち上がったサトルに比べて、男はポールが重そうな
プラスティックケースにひっかかって,もがいていた。
「ちくしょう!てめぇ!」
ふう、と一息してから、サトルは小型カメラのついた携帯電話を
胸ポケットから出すと男の姿をキャプチャーしてから,警察直通ダイヤル
の短縮ボタンを選んだ。今なら誰でも持っている携帯の機能だ。
そして、通話で事のあらましを説明した。おそらく、これもレイザーを
使って,ポリスが急行してくれるはずだ。
最近はちゃんとしたルートを飛行しないとか、こういう窃盗にレイザーを
使う事件が起こっているのはニュースで知っていたが、遭遇するのは
もちろんサトルにとって初めてだった。
ポリスへの状況説明も,携帯から照会システムを使ってほんの数分で
終わった。
路地を出てから、サトルは背広の汚れを調べていた。
「あの・・・ありがとうございました」
追ってきていた女性が傍らに立っていた。
「いや・・・とっさでよくわからなかったけど・・あいつにひったくりに
遭ったの?」
「ええ・・。とっても大事なもの。取り返せてよかった・・」
セミロングでちょっと赤みのかかった髪にくるんとした瞳のその女性は
サトルより少し年上のように見えた。男から取り返した大きな袋を
重そうに,でもしっかりと両手で掴んでいた。
女性はそれ以上は話さず、サトルも黙っていた。
回りのやじうまの声が大きくなり、ポリスが男を連行していった。
サトル達の横を通り過ぎる時、男は腕を拘束されたまま、女性を睨んだ。
「今度は容赦しねぇからな」
サトルには,よくある捨てゼリフに聞こえたが、女性はとたんに表情を
こわばらせたようだった。
「あれ?」サトルは背広のポケットにかぎ裂きがあるのを見つけた。
「まいったなぁ・・・まだ,買ってすぐなのに・・」
「あの・・」女性が言った。「その傷、私、直せます。」
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女性は、エリコ,と名乗った。エリコの後について、サトルは歩いて
いった。マンションとおぼしきビルに入った。
3桁に近い、かなりの数の階を表示したエレベーターだったが、数秒で上部の
階に着いた。
住宅と思って入ったドアの中は、整理された小さな作業場のようだった。
奥はパーティションでいくつかに区切られている。
「そこで、ちょっと待っていてくださいね」
エリコはサトルの背広を持って、パーティションの一つの中に姿を消した。
丸い椅子に座って,サトルは待つことにした。窓はあったが、そこからは
空らしきものしか見えなかった。エリコの入っていったらしき場所から
低いノイズのようなものが聞こえていた。
30分ほど経って、エリコが背広を持って出てきた。
「これで、どうかしら」
「!?」サトルはびっくりした。「そのまんまだ!。どうやって復元
したの?」
おそらく仕立屋で修繕を頼めば、こう簡単にはいかない。
「復元じゃなくて・・」エリコは微笑みながら答えた。「複製、という
のが正しいかしら」
エリコの話によると、ここではコピーを研究しているそうで、それは
ただの紙片だけでなく、あらゆる物に関して、らしい。
「この生地も、全く同じ糸とかではないけど、かなり近い種類のもの
で複製できるの。あとはその部分を[すげかえ]するの」
「ふーん・・・・」と感心してから、サトルは急に不安になった。
「そんな装置、使わせてもらってよかったの?もしかしてすごい技術料
払わなくちゃいけないとか?」
「いいえ」エリコはさらに目を細くして笑った。「まだ開発中だから。
そんな偉そうなことはできないわ。それでも、もう実用化寸前まで
行ってるから,出来は問題ないわ」
「なんだか、かえってキミにお世話になってしまったなぁ」
「いいえ。お礼を言うのはこちらの方」
「そうか・・・」サトルはやっと訊ねる気になった。「さっき盗まれ
そうになったものって、大事なものだと言っていたよね。よかったら
何なのか教えてくれないか」
エリコは、ちょっと迷ったようだったが、黙って奥に歩いていった。
そしてあの袋を持って戻ってきた。袋の中には頑丈そうな箱が入って
いた。エリコは固定用のテープを剥がし,箱の蓋を開けた。
中に入っていたのは、アナログレコードのレコードジャケット(もちろん、
中身もあるだろうが)であることはサトルにはすぐわかった。
「これ、古いモノなの。今じゃ使う人もいないでしょうけど」
「すごい!」サトルは目を丸くした。「これ、本物なのか?なぜ、
こんなにたくさん?」
「知ってるの?これ。レコードだって」
「もちろん。ボクも音楽関係の仕事してるから」言ってしまって、サトルは
ちょっと恥ずかしくなった。「それくらいはわかる」
「私も、最初はこんなものがあるなんて知らなかった。でも、おばあちゃんの
若い頃は,知ってる人って、結構いたんだって」
「ただ、それを聞く為のプレーヤが問題なんだよな。」
「そうよね・・・」
エリコの表情が急に曇ってしまったのと、アポの時間が迫っているせいで、
サトルはもう一度お礼を言うと、慌てて部屋を後にした。

「サトル、知ってっか?」
夕刻。朝立ち寄ったコーヒーショップに,またもサトルとコージがいた。
「何?」
「なんだか、ライバルが現れたみたいだぜ」
「ライバル?」
「オレ達みたいな商売で、もうちょっと効率のいいのがあるらしい。」
「?」
「たしか、オプティカルディスクのコピーが使用目的にかかわらず全て
法的に禁止されたのはずっと前のことだけど、それをアナログに焼く
ことは規制がないらしい。」
「でも,わざわざアナログにレベルダウンするなんて・・」
「そうでもないらしい。」コージは妙に真剣になった。「逆に、そういう
のがよく売れることもあるらしい。ずっと高い値段でさ」
「でも、どうせ肝心の再生装置が普及してないだろ」
「だから、それも抱き合わせで売るのさ。プレミア付のレコードなら
なおさら儲かるってワケ」
「ふーん」
「でさ、サトル・・・・・ま、いっか。そりゃそうと、・・」
昨日のスポーツの話題をコージは話しはじめたが、サトルはいきなり
エリコのことを思った。コピー・アナログディスク・・・
しかし、それ以上の想像力は働かなかった。

客からのクレームを処理していたせいで、サトルの帰社時間は予定よりも
かなりオーバーしていた。
IDカードを会社の入り口のセンサーにくぐらせて、手早くフライトウエア
に着替えると、全力で走って近くの「タケポート」に行った。
案内のアナウンスは「本日もご利用いただきましてありがとうございます。
これをもちまして営業を終了・・・」と聞こえている。夜間のフライトには
時間制限がある。
「レイザー」を使っているときはいいのだが、時間に遅れてこれを地下鉄とか
で運んで帰る場合は、おそらく他の乗客が思う以上にサトルは屈辱感を覚えた。
だから、サトルはできれば飛行ルートで帰りたかった。
「すいません!すぐ乗りますから!」
サトルは自分の帰宅ルートの筒を見つけて,準備もそこそこに飛び込んだ。
空に打ち上げられると、昼間と違って、眼下の光景はなかなかいいものだが、
危険性が増すことは彼も知っていた。そのため、飛行モードはオートに
していたのだが、例のプレーヤのあるビルに近づくと,それは解除した。
(たしかに、コージの言うとおり、アナログレコードは狙い目かもなぁ)
その部屋の明かりが点灯しているのを見て、サトルは近づいていった。
朝と同じように、プレーヤが見えた。
ステイした途端、突風がサトルを襲った。
「わっと!」
姿勢制御する余裕もなく、サトルはビルに向かってはね飛ばされたようだった。
レイザーがそのままでは危ないので、減速モードに直して、ちょっと乱暴に
あの部屋のベランダに滑り込んだ。この程度の危険回避行動は許されるはずだ。
「まずいな。すぐ離陸しないと・・」
しかし、そのベランダの広さではレイザーがうまく開けないことがわかった
サトルは、困った様子でそっと部屋の中を覗いた。
あのプレーヤがある。そしてその回りにはアンプや巨大なスピーカが見えた。
人影はない。
(事情を話して、どこか広い場所に通してもらおう)
サトルは窓を軽く叩いた。部屋の様子は変わらない。
手を窓に掛けると、施錠されていない。
靴を脱いで片手に持ち、サトルは静かに部屋に入った。
フローリングの上に敷かれたと思われる絨毯をきょろきょろしながら横切り、
彼はドアを見つけた。見渡すと、ただ音楽を聞くためだけに作られた部屋の
ようだった。サトルにとってはうらやましい限りのスペースだ。
ドアをノックするかどうかの決心だけでかなり迷った末、握った手を顔の
前に持ち上げた時、ドアが向こうから静かに開いた。
「あ!」
「あ!・・・・・あなたは、昼間の・・・」
サトルの前に普段着のエリコが立っていた。

モーツアルトやバッハから、クイーン・ツェッペリンと、サトルは貪る
ようにアナログの音を堪能した。グレーのソファの横にはエリコがじっと
座って彼を時々じっと見つめていたのだが、サトルはそれには気づいて
いなかった。
そろそろ東の空は明るくなる時間だというのに、サトルは眠気を感じな
かった。
ベランダに緊急退避したことをエリコに説明するのもそこそこに、
サトルはずっと憧れていたプレーヤの持ち主がエリコだったことに、
かなり興奮していた。
そして、試しにちょっとだけ、と聞かせてもらうことを許され、もう
数時間も夢中になっている。
「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の
ラストが静かに終わって、サトルは大きく欠伸した。
「はぁ~っ。いいなぁ・・・」
エリコもそっとつぶっていた目を開き、サトルを見た。
「私も、こんなに長くきいてたのは初めて。」
「ごめんよ。つい夢中になって・・」
「ううん。いいの。また、聞きたかったら来てくださっていいのよ」
「本当!?本当に、いいの?」まるで少年のようにサトルは顔を輝かせた。
「あ、でも、今度はちゃんと入り口から来るから・・」
「ふふっ。そうね。」
笑ったままのエリコを見つめて、その少し後で、サトルはそっと彼女に
唇を重ねた。腕の外側から,エリコが腕を回してきているのがわかった。

それから一ヶ月ほど、暇があればサトルはエリコの家に立ち寄ると、
彼女の所有する大量のレコードを聞かせてもらっていた。
エリコはいつも彼のそばで大人しく座っているだけで、それ以上の
親密さを求めているふうでもなかったが、サトルは自分への好意を強く
感じていた。しかし、それ以上にアナログレコードの音は魅力的だった。
それは、専用に設計された、この部屋の設備にもあるとわかっていた。
「なぜ、エリコはこんなにレコード持ってるの?」訊ねてみたことがある。
「・・・祖母が、好きだったの。ずっと仕舞っておいたのを、最近
見つけたの。この部屋も父さんがどうしても、って作ったの」
それにしても、現在では市販されていないレコードがこんなにあるのも
不思議だったし、クラシックからロックまで、一人の人間の嗜好にしては
ジャンルが広すぎるようにもサトルには思えていた。

ある日の朝の朝礼のあとで、サトルは支店長に,会議室に来るように
命令された。会議室には支店長だけが座っていた。
「じつは、キミに頼みたいことがある」
「何でしょう?」
「Rタウン、知ってるだろ?あそこで、うちの契約がことごとく切り替え
られている」
「?あそこにはウチの営業しか入ってないはずですが。」
「同じサービスならな。」支店長は脇にあったパンフレットをサトルの
前に移した。「これを見たことがあるか?」
パンフレットには、セピアな写真を使った、アナログレコードの
配送サービスの案内が説明されていた。
「いえ、見たことはありません」
支店長は、ちょっと不機嫌な顔をした。
「これを、なんとかして欲しい。値段を見たまえ」
明らかに、サトル達の売るサービスよりも格段に安い。しかも、プレーヤも
レンタルできるようだ。耐振動や、針の無償交換など、サトルが個人的に
考えても魅力的に思えるサービスだ。
「知らないなら、仕方がない。とりあえず調査だ。しかし、1週間後
にはなんらかの対策を実施してくれ」
「!?そんな期間ではできませんよ」
「キミを見込んでの仕事だ。よろしく頼む」
支店長は席を立って出ていった。
(まいったなぁ・・・・)
サトルはパンフレットを手にして、次の考えが浮かばないでいた。

気が重かったが、サトルは帰りに,いつもの通りビルの屋上に着陸すると
階下のエリコの部屋の前に立っていた。
「そう・・・・お仕事大変なのね・・」顔を伏せながら、エリコはサトルの
話を聞いていた。「でも・・・・うまくいく,って信じていれば、きっと
なんとかなるわ。気休めかもしれないけど。私も・・・」
「エリコは、いいんだ。」サトルは心配をかけすぎたかと思って、慌てて
言った。「ボクの問題だから。気にしないでいいよ。」
結局その日は、針をレコードに落としたものの途中でやめて、サトルは
帰ることにした。とてもいつもの落ち着いた気分では聞けなかった。

(つづく)
「新しい靴を買わなきゃ」という映画って、見ていないけど、こんな話?というムボーなストーリィ・・・
書いたのは、もう10年以上前だけど・・・
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最初は、1社の特許のように思えた。
それも、家の外と内を1日に何度も往復しなければならない、引っ越し業者
のような人向けに。
足を乗せると、即座に左右からモウセンゴケのように足首にまとわりつく
感覚には抵抗のある人もいたようだが、新しいモノ好きな若者を中心に,
一般の人へも次第に普及していった。
その「イミード」(即座に、という意味らしい)と名付けられたシューズ
は,着脱にいちいち紐を結んだり、かかとが折れるのを指で防いだりしないで
履ける、画期的な靴だった。
2枚の花びらがしおれたような「イミード」にはビジネス用もあれば、
ロングブーツまで,形状は様々だ。靴底のセンサーで、メーカーのカタログ
では平均0.34秒で靴の形を復元する。
前後の接着面は鞭のような部分で瞬時に接合されるため、通常の
使い方では問題はない。アスリート用となれば、さらに補強するパーツが
オプションに用意してある。
ただし、当然有名ブランドの「イミード」はなく、実用や興味本位で
購入する人がほとんどなのにしては、割高なことが順調な売上げを妨げて
いたが,皮革業界を越えたメーカの間では,徐々に商品カタログに加える
ことにやぶさかではなかった。

大学生の沙綾(さや)は、二ヶ月の家庭教師のバイトのおかげで,やっと
「イミード」を手に入れた。明るいブルーのスニーカー。ジーンズをはく
ことの多い彼女にとっては、念願のアイテムだった。
「センパイ、びっくりするかな・・」
軽そうになびく肩までの髪を踊らせて、沙綾は3Fのアパートのドアを
開けた。
親元を離れて3年目になる自分の部屋は、きちんと整えられているとは
言えないが、それでも部屋の家具とは調和を保っていた。オレンジ系に
統一された,お気に入りのイメージが,彼女の気持をいつも優しく迎えて
くれた。そして、彼女のカレシである駿也にも,そうしてくれるはず。
両手に抱えた買い物袋を持ったまま、戸口で靴を脱ぐ。「イミード」の
両方の靴の内側を上下に少しずらして一瞬じっとすると、「ふらっ」と
花びらのように靴が左右に割れた。
そのまま足を浮かせば、靴はちゃんとそこに置かれたままになるのだ。
テーブルに,食料品をどっさり買い込んだ袋を乗せて,沙綾は、夕食の
スコッチエッグの準備を急いで始めることにした。

8時頃、サークルから帰りの、沙綾のカレシの駿也が彼女の部屋を訪れた。
「お?」駿也は、すぐに「イミード」に気がつき「買ったの?」
と沙綾に聞いてくれた。
「いいでしょー」
「沙綾、引っ越しのバイトでもするつもり?」
「またぁ・・・」
近所のアパートに住む駿也は2日に一度は沙綾の部屋に来て、一緒の
時間を過ごしていた。沙綾の作った料理を前に、たわいない話をする
日々はもう1年以上続いている。車を持っていない2人なので、
あまり遊びに行くこともないが、沙綾にとってはここで彼と会っている
ことで十分満足だった。

そんな彼が、沙綾の部屋に来る日の間隔が、少し開いたように思えた。
きっとサークルや、バイトが忙しいのだと沙綾は思っていた。
携帯に電話しても、ちょっとした挨拶のあと「あとで,またかける」と
言われたまま。さすがの彼女も自分の口調がだんだん荒くなっているのが
わかった。
しかし、1週間も顔を会わせないに至って、彼女の辛抱が限界に近づいた。
かといって、いまさら頭を下げるようなマネもイヤだ。
ちょうど、沙綾は彼に貸していたCDを思い出して、駿也の部屋に行って
みることにした。
夕方、2Fの部屋の前まで歩いて、ドアホンを鳴らす。
いきなり怒った顔をみせようとする意識を、なんとか押しとどめる。
ドアを開けたのは、駿也ではなく、彼と同じサークルの石井だった。
沙綾も幾度か話をしたことがある。
「どうしたの?」
「うん・・センパイ、いるかな?」
「いるよ。他にも・・」
入ってみると、5、6人分の靴が入り口に置いてあった。
どうやら、彼のサークルの人間が集まっているようで、笑い声も聞こえる。
「あ!ごめんな!沙綾」
隣りの人間との会話を中断して、少し頭を上下に動かしただけの駿也に、
そしてまた再び会話に戻っていった彼を見て、沙綾は腹立たしいよりも、
むしろなんだか悲しい思いで,ほんのちょっと挨拶を交わしただけで、
部屋を後にした。名前を呼ばれたような気もしたが、イミードのおかげで、
外に出るのにはほとんど時間がかからない。
自分の部屋に着くやいなや、携帯が鳴った。駿也からだった。
「さっきは、ごめん」
「・・・・」
「どうしても、今日みんなで決めなくちゃいけないことがあってさ・・」
(いつもはそんなにマジメな話してないくせに)と沙綾は思ったが、
それでも、もう1時間ほどして沙綾の部屋に行く、という駿也の申し出を
即座に断る気にはとてもなれなかった。
いままでと変わらぬ駿也が現れて、沙綾のそれまでの鬱屈とした気持は
どこかに消えてしまったようだった。

しばらくは以前のままの毎日に戻ったようだったが、沙綾はふと、
あの日の駿也の部屋の光景を思い出すのだった。
(奥に、女のコがいたわね・・見たことないけど)
駿也と話していると、それはすっかり忘れてしまうのだが、海馬から
イレースするまでには至らないでいた。

そんなある日、彼女が「イミード」関連のサイトを検索している時、
興味を引く記事が見つかった。実は、イミードにはマイクロチップが埋め
こんであって、一種のナビの機能があるという。
あらかじめ目的地をそのサイトに送信しておけば、見知らぬ土地でも
誘導してくれる。沙綾が試しに近所の図書館を指定すると、最短距離の
コースを外れるとまるで「止まれ」と言われるように、足裏に重みが
感じられる。でもそれは一瞬のことで、無視していても,それ以上は
歩くことに障害はない。おとなしく重みに従って交差点を曲がっていくと、
たしかに最短ルートで図書館に着いた。
(きっと、就職活動であちこちの街に面接に行く時、役に立つかもしれない)
沙綾は、自分のイミードに目的地の情報を送り込まれる際に、かかとにある
細かいロットNOのような数字で判別されていることに気がついていた。
携帯からも送信できるから、歩いている途中でルート変更がすぐにできる。

また、駿也の足が彼女の部屋から遠のいたようだった。
(今度こそは,びしっと言ってやるんだから。なんだか、(;¬_¬) ぁ ゃι ぃ)
後期試験のために,駿也に絶対必要な,フランス語の訳本のコピーを手に
少し歩幅を大きくして、沙綾はイミードを履いて彼の部屋に急いだ。
部屋のドアは開けてくれたのは、またも石井だった。
「あ・・・沙綾さん・・。」
「いる?」
「でも。・・ちょっと待ってよ・・・」
足下を見ると、沙綾のものより新しいデザインの「イミード」があった。
それは、どう見ても駿也のでも、石井のでもなく、女性用のものだった。
「おう、入れよ、沙綾」
駿也の声がして、沙綾は重い足取りで部屋にあがった。5、6人の彼の
仲間と、またも、あの女の子がいた。でも、その時初めて、その子を
時々同じ講義で見かけたことがあることにも気がついた。その講義には
もちろん、駿也もいたのだが。
「・・ご機嫌みたいね。いいわ!もう、帰る。持ってきてあげたのに!」
,と沙綾は叫んでしまいたい衝動にかられたが、思い切り丁寧に挨拶して、
コピーをテーブルに置くと、邪魔をしちゃ悪いから、と言い残して
とっとと帰っていった。
ただ、それだけで帰るワケにはいかなかった。
入り口の新しいイミードをみつめて、その後ろにある番号をしっかりと
記憶した。

「でも、やっぱしアイツが悪いよな」石井が、大学の食堂に隣接する
カフェテリアで,沙綾の横で少し視線を空に向けてつぶやいた。
「オレも、やめとけ、沙綾さんがいるのに、とか言ってやったんだぜ」
「うん、もう、いいの。」沙綾は、イヤな記憶を思い出すふうでもなく、
つないだ自分の両手を裏返しに、前に突っ張るように伸ばした。
「イミードって、なんか、すごいというか、こわいよなぁー」
「普通にしてれば、平気だって。」少し沙綾は笑った。「でも、あの自動
追尾機能のおかげで、アイツの相手の行動があんなにハッキリわかる
とは、予想してなかったけどね。」
「パスワードだって、よくわかったよな」
「あ、あれはね、学生名簿で生年月日調べただけ。そんなもんよ」沙綾は
それほど得意げでもなさそうに答えた。「それよりも、イミードさまさま、
かな。どんどん機能が増えるんだもん。」
「そうだよなー」石井が沙綾の方に顔を向けた。「でさー、これから、
沙綾さん、どうする?」
「ウン、行くトコがあるから。」
「そ、そう・・・」石井はちょっと残念そうな表情をした。駿也の移り気
に気がつき,それ以来、いろいろと話をしている石井だったが、沙綾には
行くべき場所があった。それも、イミードが教えてくれるはずだった。
沙綾にとっては、石井と今以上に親しくするつもりはなかった。
「じゃ・・・。行くから。」
歩きながら、沙綾は携帯でイミードのサイトにパラメータを送信した。
ある場所に案内してもらうために。
あらかじめサイトに登録しておいた自分の性格に一番合った相手と、
自分の一番お気に入りの場所で初めて出会う演出を提供してもらうために。

    <完>